空手教典撮影秘話 in アラバマ 第二弾 ~暗幕の了解~
ワールド大山空手の特徴は?
「教科書があること」
誰かの質問に対して、いつだか師匠はそう答えていた。
それが我々のやり方。
だから、教科書(空手教典)があり得るのだ。
空手教典は、私が内弟子時代の1999年(恐らく)につくられた。
その撮影は大変だったが、参加出来たことはとてもラッキーだし誇りに思っている。
あの撮影は、私にとっては単なる撮影ではなかった。
まあ、その時の状況とタイミング的な要因がデカいのだけれど。
長い内弟子生活の中で、本腰入れようと覚悟を決める分岐点となったのが丁度その頃。
そんな撮影時に起きた裏話をしようと、キーボードを叩いている次第です。
前回、そして今回としょうもない話が続きますが、よかったら読んでやってください。
では、はじめます。
撮影時には背景を単色にするために暗幕を張る。
横幅2.5メートルほどの厚紙がロール状になったもの。
その時々で白か黒を使っていた。
それをホームウッド(本部道場がある街)にある写真屋で購入する。
撮影当日、トラッスビルの道場に他の先輩達と早めに入り幕をはる。
(因みに、このトラッスビル道場はある黒帯の持ち物だった。結局何かが上手くいかずオープンには至らなかった。結果的に撮影用だけに使われた、言わば幻の道場となったのだ。)
ロール状の厚紙を縦にして、ゆっくり伸ばしながらガムテープで留めていく。
先輩がロールを下から抑えて、私が脚立の上から貼っていくのだが、紙はぶ厚く反り返りが強くて留めずらい。
ただ、この作業自体は以前にも本部道場で貼った経験があったので慣れていた。
作業は中盤に差し掛かっていた。
先輩が「オイ、最高師範来たぞ!」と知らせてくれた。
こういう時は想定よりもかなり早く来るのが常ならば、「もっとゆっくりきてくれ!」そう思うのもいつもの事だった。
脚立の上から駐車場に入ってくる黒SUVを確認出来た。
助手席にはカメラマンのO氏が座っていた。
O氏は当時、確かロスかどこかで活躍していた日本人のプロカメラマン。
歳は私よりも10くらい上だった気がする。
昨晩バーミンガム入りし、我々と一緒に前夜祭?を内弟子の寮で行った。
恐らくキムチチゲかスペアリブ入りの水炊きを振る舞った気がする。
O氏はとても優しく気さくな人だった。
どうやら朝マックしたようで、二人ともロゴ入りのコーヒーカップを持っていた。
揃ってあのロゴマークの様にニコニコしている。
こっちは筒を押さえながら、ゴリラのマークが入ったガムテープを持っていた。
「オス!」と挨拶をした時だった。
押さえていたはずの筒が倒れはじめた。
筒は無情にも2.5メートルの厚紙をビリビリと切り裂いて倒れていった。
筒が床に倒れるまでがものすごく長く感じた。
目も口も鼻もまん丸に開いた誰かの顔が目についた。
でも、それがいったい最高師範かゴリラなのか先輩か、よくわからなかった。
混乱していた。
だが、気が付けば鍵束と財布を握りしめていた。
「スミマセン、すぐに買ってきます!」と私が言うと、最高師範は黙ってポケットから20ドル札を2枚私に手渡した。
道中往復40分、色々考えた。
ただ、何となくコーヒーが冷める前に帰りたかった。
つづく
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