北の町のハネアリ
季節を知らせてくれる生き物や草花は沢山存在する。
東京練馬道場の場合、この時期の風物詩と言えばハネアリ。
残念ながら心踊るような代物ではない。
この時期にもなれば日も長くて、平日の子供クラスが終わる7時頃でも外はまだ明るい。
子供達が帰った後はデスクでホッと一休み。
その後ノートをつけるのが私の日課で、書き終わる頃には外は真っ暗になっている。
3年前にはまだ道場にはエアコンはなくて、窓やドアを全開で稽古していたのが懐かしい。
お陰で、あと数週間もする頃には道場内には蚊がとても多かった。
それよりも気になるのは私と生徒の声だ。
なんでも、線路を超えた「電車の見える公園」まで響いていたそうじゃないか。
道場から轟く大きな声は、ここ練馬区北町の夏の風物詩になっていたかも知れないな……。
ホント、よく苦情が来なかったと思うよ。
それにしても、この10数年で暑さの質が変わった。
昔は今ほど強烈じゃなかった。
さておき、7時半からの大人クラスにやって来た生徒が、道場に入るや否や「師範、ヤバいですよ!」と言うのだ。
どうしたか尋ねると「虫だらけで気持ち悪いです」と、少々顔を引きつらせて言っている。
何を大袈裟に騒いでいるのかと思い確認すると、その光景に思わず背筋がゾワッとした。
白いマットの上に小さく黒い物体がウニョウニョと動いているじゃないか。
動いていると言うか、隙間の多いたたみいわしの様に白いマット一面にそれが敷き詰められている様子だった。
「また来たか」と、毎年恒例の景色に一気に憂鬱な気分になった。
私はコロコロを取り出した。
経験上これが一番なのだが、獲れど獲れど窓の下、サッシの隙間からは一列に並んだハネアリ達がウニウニウニウニとまるでゾンビの様に道場内に侵入してくるのだった。
道場の周りは店も無ければ何もない。
夜は道場だけがふわりと明るい。
白いマットが余計に目立つ。
その日は午前中は雨、湿気地獄の様な午後を迎えていた。
そりゃ虫君達も寄って来るさ。
まあ、17年も道場をやっていると色々あるもんで、生き物系でいうと少し前に書いたタヌキとの遭遇もあれば、鳥が道場内に迷い込んできたこともあった。
立場上なのか、そんな溢れんばかりの小ネタも含めて全ての事柄を前向きに捉えようと考えを巡らせるわけだけど、ハネアリに関してはどう考えても良いひらめきには至らなかった。
挙句、たどり着いた答えは「無理に考えをめぐらす必要がないこともある」ということだった。
このハネアリ、例年通りでいくと大量発生は年に一度か二度、のはず。
まあ、今年も暑くなりそうだし雨も多そうだから果たしてその程度で済むのだろうか??
今後のハネアリの動向に注目したい。
いや、しなくていい。
では。
TAGS: 東京練馬道場・稽古・経験 | 2024/06/17
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