新しい黒帯達
合宿の直前にピカピカの黒帯とゴワゴワの真新しい黒帯用の道着が届きました。
2人の生徒が合宿で黒帯デビューを果たしたのです。
今回のブログでは、そんな新初段となった2人の生徒と、もう1人の黒帯を紹介させていただきます。
今年の合宿では9人の黒帯が参加しました。
質の高い技術とリーダーシップを遺憾なく発揮してくれました。
彼らからしてみれば「普段通り」といったところでしょう。
ただ、やはり黒帯を締めると周りの見る目は変わります。
失敗や成功、何を見せても手本となるのが彼らです。
何を見せても=何でもやる=必ず目の前の課題と向き合える事、人一倍経験を掴める。
そこが黒帯の強みです。
先ずは高校2年生の話です。
最初に合宿に参加したのが2017年、小学4年生の時でした。
緑帯を締めています。
空手を始めたのは2014年、小学1年生の時でした。
当時の合宿参加には年齢制限がなくて、年長さんの参加があった時代に入会から4年目で小学4年生の時に初参加は結構遅い部類です。
ですが、2泊3日の合宿って家庭や体調、他の習い事の事情が絡みますからね。
やっぱりタイミングが合わなければどうしようもない部分はあるのです。
ただ、彼は大会や発表会などの他のイベントは積極的に全て参加していました。
何と言っても彼の長所は素直さで、常に全力を出せる才能を持っています。
今まで彼を10年間見てきましたが、アタフタすることはあってもボ~っとしたことは皆無です。
行動に損得なんて全く考えないですしね。
なんでしょうか「昭和の体育会系の良いところだけを持ち合わせている」といった感じでしょうか??
今回、黒帯として初めて参加しましたが、素直な才能に輪をかけて、全ての行動を全力でこなす彼の姿がありました。
彼のようなタイプの人間は、機会を活かして挑戦さえしていれば常に自信と経験を掴むことが出来るのです。
私が今まで多くの子供たちをみている中で、4年生で大きく成長する子供がとても多いです。
どうやら「4年生の壁」という言葉があるようですが、悩みや疑問も多くなるこの時期は、物事の理解度が一気に高まる年頃なのかもしれません。
ただし、大きく成長を見せる子供達には条件があります。
それまでに「多くの経験を積む」ということです。
10代を迎えるにあたり、それまでの経験は物事を理解出来るようになった時の準備と言えます。
理解してからやるのではなくて、理解出来るようになった時にあれやこれやの経験が一つに結び付き自信に繋がっていくと思います。
また「理解出来るようになる」ということは、損得も葛藤もするでしょう。
でも、やっぱり経験を掴める機会は限られていますからね。
理解出来るようになる前に「やれば出来る」という経験をしておくこと、それと、経験の大切さを知っておいた方が良いと思います。
合宿後にある大人の生徒が「○○先輩(彼のこと)が大人部屋に来て皆に積極的に話しかけていた」と聞きました。
彼のそんな姿は今まで見たことがありませんでした。
今回の合宿の課題、テーマは「しゃべる」ことでしたからね。
正に彼らしい行動です。
合宿中、彼は常にニコニコしていました。
こんな終始明るい彼を見たのも今回が初めてでした。
さて、2人目は中学3年生の格好良い女子です。
彼女の凄さは求心力。
ウチの道場内でもそこはずば抜けてナンバーワンでしょう。
彼女が空手を始めたのは2017年、小学1年生の時(画像は2018年)です。
合宿初参加は、2018年、彼女が2年生の時でした。
当時から食事の配膳や片付けを率先して行動している姿が今でも強く印象に残っています。
中でも、小さな体でみそ汁のお椀を目一杯のせた大きなお盆を両手に抱えるその姿を見た私と宿の人で「おっかさん」と噂していたのを思い出しました。
今年の春に行われた支部内戦では、審判からカメラマン、進行役とフル回転でした。
それらを自らの判断で行動していました。
その間、後輩達には積極的に歩み寄り励ましたり褒めたりする姿も目立ちました。
そうした判断と行動は、講習会や審査でも同様です。
何らかのイベント後には誰かしらの生徒の親が私のところにやってきます。
理由は、彼女に感謝の意を伝えるためです。
今回の合宿では11名の女子が参加しました。
彼女が一人でその11人をまとめる事になり、合宿前には少し不安も漏らしていたそうです。
ですが、まあ、物の見事にまとめ上げてくれました。
合宿後に、彼女の影響を受けて空手に対してのモチベーションをあげた後輩達も少なくありません。
黒帯を取得したことで持ち前の求心力に影響力が加わりました。
これは一重に彼女の積極的な姿勢によるものだと思います。
ただ、それら周囲をまとめ切る、または好影響を与えるリーダーシップは一朝一夕で成し得るものではありません。
常日頃から丁寧な挑戦と行動を心掛けて積み上げた経験と自信、その姿勢こそが人を惹きつける印象となっているのでしょう。
さて、もう一人は高校2年生。
彼が昇段したのは2021年で、コロナ禍ということもあり合宿は出来ませんでした。
入会したのが2013年で、彼がまだ4歳の時。
合宿初参加は2015年、小学1年生の時でした。
彼の場合は、それこそタイミングがなかなか合わずに合宿参加はその2015年と今年の2回きり。
彼の今の存在感と活躍をみると、常に合宿には参加している印象だったので私自身が驚きました。
紹介の仕方は違いますが、黒帯を取得して最初の合宿参加時には対象者を紹介するのが毎年の恒例となっています。
やっぱり昇段は立派なもので、彼らに敬意を称するのと、皆の目標ですからね。
過去を振り返りながら成長の過程を記載することで、皆の希望になると思っています。
彼の場合は、タイミングが合わずに紹介出来ていませんでしたので、今回一緒に紹介することにしました。
いや、でも今年の彼の活躍ぶりを見ると、流石は黒帯、ということなんですが、恐らく彼からしてみれば、合宿の参加が少ないけど「だから何?」といった心境だと思います。
常に積極的な姿勢で稽古していますからね。
たまたま合宿は来られない時があったとしても、あらゆるイベントに対する挑戦も常に積極的な姿勢で挑んでいるし、いちいち彼が葛藤している所を見たことがありません。
強みは何と言っても「真面目」ということです。
いらぬ派手さもなければ、欲しい図太さも持っているように感じます。
反面、頑固さが一辺倒な対応や行動を招くときもありましたが、それも今は昔。
黒帯を取った頃から、素直さと柔軟性が出てきています。
特に、自身の稽古ではその変化がはっきりしていて、技の特徴を掴む事、体のコントロールがとてもスムーズに出来るようになりました。
合宿でも、仲間や後輩への接し方、指導の姿勢に至っても表情豊かに色々試しているように見えました。
「こんなに笑うんだ!」と思うほど合宿では彼の笑顔を見ることが出来ました。
これは、私の中では新たな発見でしたが、普段の生活での素の姿なのかもしれません。
ただ、素の姿だとして、そんな表情を見ることが出来るのも合宿ならではで、彼の事をより知ることが出来たのに違いありません。
兎に角、こうして彼が笑顔で素直に自分と向き合い常に毅然とした態度でいられるのは、常に前を向き今と向き合い続けた結果だと思います。
さて、今回の合宿も気持ちとは裏腹に参加出来なかった生徒もいます。
ですが、ここで皆さまにお伝えしたいのは、挑戦とは状況の元にあるということです。
例えば合宿においても、部活や家庭の都合、体調も含めて不参加が致し方ない状況はあるわけです。
そこは自身が明確に状況を理解しなければなりません。
それで、理解をするのならば胸張って、それ以上自分や他人もしくは怪我等の状況を責めたり、嘆いたりしないことも今の課題と向き合うことの一つです。
今までなかなか合宿に参加出来ていない生徒も、彼の様な姿勢で稽古に向き合えば、もしくは、向き合えるようになることが出来れば、彼の様に立派な黒帯になれるのです。
今の現状を把握して胸を張れるような行動をとれているかどうか、と言う事です。
さあ、今回は3人の黒帯達の軌跡を追っていきましたが、いかがだったでしょうか?
物が熟成するのも人が成熟するのも時間が掛かるものです。
成長を意識することから挑戦が始まるのか、挑戦するから成長を意識するようになるのか……。
どちらにせよ、そうして前に進めば、自ずと失敗と成功という成長には欠かすことの出来ない結果に巡り合うことが出来るのです。
経験を大切にすれば行動を大切にする。
それは自分を大切にすることに繋がると思います。
人はどうあがいても1年に一つしか年を取ることしか出来ません。
結果だけを求めて焦るのではなくて、今と向き合うことが大事だと思います。
そうして上手く時間の波に乗り、ある程度の長い時間を掛けた先に自然で豊かな成長を掴むことが出来るんじゃないか、そう思います。
黒帯はその構図の象徴だと思うんですよね。
彼等には、全ての後輩達が直面する出来事や心情を察することが出来る。
それほどの豊かな経験があります。
それは、一つ一つ大切に積み上げてきた経験ですが、特別なことは何一つありません。
皆と同じ立場の時に皆と同じ挑戦をして、皆と同じ経験と自信を掴み続けて成長した結果なのです。
1人でも多くの生徒に黒帯としての景色を見せてあげたい。
そう願っています。
それでは。
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