旅に出た少年
5年生のキッズが「何から練習したらよいかわかりません」と言ってきました。
上級の子です。
上級ともなると、知らなきゃいけない技も結構増えていて、ある程度の自信と頭と体を整理して割り切らないと、焦りも混乱も出てきます。
色々あると迷うのは何でも同じですね。
上級になって同じ悩みを抱えるキッズは結構います。
やめるキッカケの理由の1つかもしれません。
ただ、将来のために割り切りや整理の仕方は、どっかで覚えたほうが良いのは言うまでもありません。
その子は以前から丁寧に1つ1つこなすことが苦手でした。
その都度、ノートをつけるように言ってきました。
ノートや努力と言ってもやらない子が多い中で、やる子も結構いるのです。
やる子の中でも丁寧にやる子と雑にやる子がいます。
でも、続けていけば内容は変わっていきます。
ただ、ここがキッズの面白いところでもあり、良いところだと思うのは
道場に入る時の表情で、ちゃんとやったかサボったかがわかります。
「素直でよろしい」と言いたいところですが、感心している場合じゃありません。
その”開き直れなさ”は稽古に影響するのです。
サボった子はオドオドして、まるで犯人が逃げて隠れるような稽古になってしまいます。
期待や責任や、上級者ならではの葛藤があるのも確かです。
こうして「やることをやる」開き直りのパワーと、その大切さを知っていくのです。
結局、世の中胸を張れるかどうかって事と直結していますからね。
シンプルだけど、だからこそ、大事な経験だと思います。
「課題がわからない」のじゃなくて、何もしないから課題が見えてこないのです。
そこは「宝(課題)探しの旅に出てきなさい」と肩をポンと叩いてあげるのが私の仕事です。
“大人のリード”にボンバーチョップを添えて送り出すのです。
こうして行動に出ることで、ひとまず胸を張ってもらいます。
これは、技を出す前の構えや仕事をする前の整理整頓と同じで、これでようやく地に足をつけるコトが出来るのです。
あとはスタートを切る(一歩前に出る)までです。
積極的にチャレンジすれば、どんどん良い所と悪い所が見えてきます。
そこを逃さずキャッチするのが空手ノートの役目なわけですが、続ける中で、何度も何度も同じコトを言われていることに気付きます。
それがつまり自分の癖です。
癖も”壁”のようなモノで、上手く付き合って行けば良いのです。
気をつけないと嫌気がさしたり、なんども褒められているコトだって慣れてしまえばそれを大事にしまうコトが出来なくなってしまいます。
ただ、冒険はドキドキの危険がつきものです。
それは、簡単に上手くはいかないコトくらい皆知っていると思います?!
でも「それが普通だ」って知るコトは、やっぱり自分で経験して掴むものでしょう。
ノートだって、やれ”書くのを忘れた”、やれ”持って来るのを忘れた”と最初のウチはなりますが、それなら、どうやったら忘れないかを一生懸命考えるのだって大事な大事な経験だと思います。
山あり谷ありの冒険を一つ一つちゃんと受け止めて、大事に前に進んでいれば、その先にきっとお宝(成長)は眠っているはずです。
彼は以前「辞めたい」と言ってきたコトがありました。
きっと頭の中がグチャグチャだったと思います。
でも、私に投げ掛けたことも、「何をしたらいいかわからない」って理解していたコトも、「どうにかしたい」って思いがあるからではないでしょうか。
それだけでも自分と向き合っている、立派なコトだと思います。
さて、すぐそこに見えている宝を手に入れるのは何も面白くありませんし、宝を探しに行かないのはもっと楽しくありません。
山あり谷あり、どうせなら世界一面白い冒険をすれば良いと思います。
彼にしか出来ない冒険を、楽しみに見守っていこうと思います。