天才くんとボンサイマン / 第3話
天才くんとボンサイマンの続き、最後です。
天才くんと称される子供達と上手くやっていくには、経験から状況を先読みした方が良い。
でも、実はその経験の裏には油断を生む危険が潜んでいた。
先読みは出来るようにしたいけど、それは簡単なことではない。
だからこそ、先読みの訓練を常日ごろからやろうじゃないか……。
先日の子供クラスのことです。
5歳の子がぐずって最初から突っ立ったまま何もせずにいました。
何度か稽古に誘いましたが、ことごとく失敗に終わりました。
でも、稽古の全てを何もやらせないで帰らせるのは嫌なので、チャンスを伺っていました。
2人1組にペアを組み、対人で稽古をする時でした。
動かない彼の目の前に同い年の子を立たせました。
子供達に技と課題を指示しました。
「よーいドン!」
対人の稽古がスタートしました。
すると、平然と彼は稽古をやり始めたのです。
空手を教えて20年程経ちますか。
その日は完敗でした。
ぐずっていた子供にも、そしていとも簡単にリードした5歳の”年長さん”にも。
「おそるべし5歳児!」と言いたいところですが、いや、これこそ天才同士のなせる技なのでしょうか。
勿論”年長さん”本人にリードする意識はないでしょう。
でも、だからこそ、グズっていた子が無意識のまま稽古に入れたのかもしれません。
私の場合意地を張ってしまったし、上手くいかない事への焦りもあったと思います。
そんな気負った状態で天才くんに敵うわけがないのです。
“自然に””普通に”って思えば思うほど、不自然であり普通じゃなくなるんですよね。
実際にそれが指導にどれくらい影響するかはわかりません。
でも、やっぱり、たとえ動揺はしたとして、あまり悟られたくはないものです。
子供はそこを見逃しはしません。
子供のクラスは先読みが一番試せる場だと思います。
一番気が抜けないですが、それは一番わかり易い、とも言えるのです。
子供クラスの質が上がることは、私自身成長するということ。
逆に、私自身の成長がクラスの質を上げる。
当然といえばそうですが、そのことを肝に命じて日頃から気をつけていければ良いと思います。
“経験”というキーワードは今まで何度も何度も繰り返し使ってきました。
ですが、道場が12年目を迎えて、新たな視点で経験を意識して稽古出来ることを嬉しく思います。
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