変身
少し前の話になるが、審査を行った。
コロナ対策として、普段の稽古同様に対人無し大声無しでの初めての試み。
上級を目指す4年生の子がいる。
彼の長所は「真面目」ということ。
ただ、丁寧にキッチリやろうとするが故に、不安がよぎるとアタフタと慌てるフシがある。
そのほんの少しの動揺が足を引っ張り、出来る事まで出来なくなったり、
目一杯力を出し切れないところがある。
彼が審査を意識し始めたのは2月程前のオンライン稽古の最中だった。
そこには、自分の特徴をよく理解して、癖と向き合いながら稽古している彼の姿があった。
間違えた時、間違えそうになった時、動揺しそうになったりしている事に気付いた時、
次の動作でチカラに変えようとしていた。
歯をくいしばるのではなくて、自然に目線を決めて、構え(立ち方)を決めよとする姿は
上級者になるための準備は既に整っているように見えた。
審査は予想通りの展開となった。
彼は全ての要素を自信に繋げてくれた気がする。
合格発表までは数週間掛かる。
その間、彼の稽古態度は実に見事だった。
帯は同じでも、ガラリと変身したように見えた。
審査での自信を(上級者の)自覚に変えていた。
上級クラス初日を迎えた。
上級者のちょっと渋めな深緑の帯も良く似合っている。
因みに、ウチの流派は緑の前がオレンジ、しかも割と明るめなオレンジなので、
どちらかというとちょっと可愛らしく軽い印象があるのだ。
さておき、上級クラス初日はヌンチャクとトンファーを使った武具の稽古。
彼は合宿で多少武具をいじったことはあるが、本格的な稽古は初めてだった。
最初に簡単な構えと振り方をやった後にいきなり型に入った。
彼は今までの経験を生かし、出来ることをキッチリやってのけた。
ウチの道場の場合、対象のクラスが初級から中級に変わる時の生徒の顔と、
中級から上級に変わる時の生徒の顔は全く違う。
上級に変わる時だって、そりゃ緊張はあるだろう。
でも、表情にそれは出ない。
さて、彼にとっての上級クラス初日は終了を迎えた。
「正座」
「黙想」
「黙想やめ」
リーダーが号令を掛ける。
最後、私が「立って!」と言うと、彼は誰よりも素早く起立した。
コメントを残す