海賊
食の秋、運動の秋、学芸会の秋、空手の秋はさておいて……。
道場周辺の小学校では今年は学芸会が流行りのようで、子供達は私に「○○の劇をやります」だったり「○○の役に選ばれました」と報告してくれるのだ。
そんな中、一年生の子が「師範、ぼく海賊をやります」と言ってきてくれた。
「おーすごいじゃない!」
「台詞は?」と聞くと、2つの台詞を棒読みで披露してくれた。
「よーし、そしたらそこはもっとこうしてああして……」なんて一緒に盛り上がっていたのだ。
「ところで何の劇をやるの?」と聞くと彼は「海賊です!」と答える。
「いや、それは役だよね、そうじゃなくて劇の名前は?」
「海賊です!」と彼はまた答えた。
「そうか、海賊は君のやる役だよね、物語の名前は?」
「海賊です!」
「ん~」
……。
「例えば桃太郎知ってるよね?」
と言った瞬間、私は「まずい」と思った。
ここで作品名と主人公が同じ名前の桃太郎はないだろう。
でも、時すでに遅し。
もう後には引けない。
「桃太郎は桃太郎の物語の役の名前だよね」
彼はポカンとしている。
私もポカンとするしかなかった。
「桃太郎は桃太郎って物語の桃太郎って役でしょ」
「君は今回海賊役をやるんだよね、その物語の名前は?」
「えっ、海賊です」
……。
カンパーイ!
では。
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