変身リーダーズ
ある日の江古田初級クラスでのこと。
その日は今度小学3年生になる子と2年生になる子。
それに、4才と3才が1人ずつと、いつもより少人数でのクラスとなった。
この小学生2人は昨年、大きく成長した。
ウチの道場内でも一番大きな成長を遂げた2人と言っても過言ではない。
2人共、入会当初は兎に角ぼけーとしていた。
前を向く事すら出来ずに技や立ち方もなかなか出来なかった。
組手をやっても何も出来ずに、というかやらずにただ下がるだけだった。
昇級も人一倍時間が掛かった。
だが、その頃から徐々に成長の変化が見られるようになった。
今度3年生になる子は、次第に周りとの競争の意欲が出てきた。
ただ、安定はなくて、気分が乗らない時は一生懸命稽古出来なった。
注意されてもそういう時は下を向いたまま道場を後にしていた。
ただ、今まで同じクラスで稽古していた子達が上のクラスに移動してリーダーの座がポカリと空くと、彼の中でリーダーの意識が芽生えたようだ。
まだ良い稽古が出来る安定感はないが、注意されるとすぐに変化出来るようになった。
組手も全く同じで、上手く行かない時でもずっと下がる事はもうなくなっていた。
相手に向かって行けるようになった。
さてもう1人、今度2年生になる子は、稽古中に質問に対して発言するなどあり得なかった。
型をやっても少しでも不安になると、キョロキョロと周りを見回しては技や構えを決めることなく動揺が彼を支配していた。だから余計に慌ててしまう。
その繰り返しが癖になっていた。
ただこれ、焦ったり動揺するのは真面目にやろうとする証しで、心配いらない。
でも、やっている本人は当然そんなことを思う余裕はない。
動揺は心の問題。
ならば体を使って一つ一つ覚えていくしかない。
なるべく細かい動きに絞って何度も何度も繰り返しの稽古が始まった。
すると彼は次第に力が入るようになってきた。
自分自身の動きに「キメ」を作れるようになった。
その動きに比例するように自信も掴めるようになった彼は、何時しか発言の回数も増えて行き、積極的に周囲との競争を試みるようになっていた。
一時は稽古が嫌になり2週間程稽古を休んだ時があったのも、今では良い経験となっているだろう。
ただ、それでもなかなか向き合えない稽古があった。
組手だ。
でも、彼は一つ一つ具体的に課題を絞れば、繰り返しの稽古を一生懸命こなして確実に身につける事が出来る才能がある。
組手もトータルで考えれば「やられた」「逃げた」「ダメだった」としか認識出来ない。
ただ、その中には「前を向けた」「頭は守ることが出来た」「突きが出来た」「回し蹴りが出来た」「平気だった」と実は出来たことの方が多いことに気が付くことが出来る。
もう一つ彼の良さは素直さだ。
だから人一倍動揺もするが、その代わりに自信を掴んだ時は誰よりも誇らしい顔をする。
それで良い!
そんな、自分自身を認めることが出来るからこそ、成長という変化に気が付くことが出来るのだ。
そんな今の江古田初級者リーダーの内のこの2人が、とうとうやってくれた。
4才と3才の子を相手に見事なまでのリーダーシップを発揮してくれたのだ。
彼等後輩の力を引き出そうと、稽古中は常に全力で大きな声を出し続けた。
立ち方を決めたらまるで銅像の様に我慢していた。
極めつけは稽古の最後。
私が「整列」というと、彼等リーダーの二人は「ちゃんと並んで!」「動かないで!」と大きな声で指示を出したのだった。
まさに伝えようとする意識が気合となって発せられた、そんなとても素敵な指示だった。
皆、どこか不安や人目を気にするのが当たり前。
こんな純粋な真っすぐな気合は、黒帯でもなかなか出来ない。
この瞬間は涙が出そうなほど嬉しかった。
今後、彼らがどんな成長を見せてくれるのだろうか。
この先、どんな変身を、どのような階段の上り方をしていくのか非常に楽しみだ。
それでは。
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