一つのこと / ある男子の場合
1つの事に拘りを持つのは色々と考えさせられます……。
ということで、前回の続きです。
今回は小学3年生、男子の話。
合宿後に「変身」を遂げる生徒は多くいますが、一番変身したのが彼かも知れません。
以前は、組手をやればすぐに泣き、エビの様に後ろに下がる一方でした。
型をやれば構えが決まらず、バタバタキョロキョロ動揺する姿が目立っていました。
クラスに行くのも嫌がっていた時期もありましたね。
いつの日か、そんな彼が稽古での課題を家で一生懸命に練習していることを知りました。
私は宿題を出す時がありますが、殆どの生徒は向き合いません。
なので「宿題をやっていない」ということが動揺を誘いアタフタするのです。
特に稽古に慣れてきた中級者によく起きる現象です。
まあ、小学生は学校の宿題や遊びやら色々やることがありますからね。
それが普通です。
ですが、彼だけは常に堂々としているのでした。
それは「練習してきた」「課題と向き合っている」という自信です。
周りがアタフタして間違えるから、周りに合わせて皆が間違える。
そんな負の連鎖が絵に描いたようによく起こるのが中級クラスです。
ただ、彼は周囲を気にすることなく、自分の意志のもと自分で技を決めることが出来ます。
とは言え、彼だって間違えることは多々あります。
でも、人に釣られて何となく間違えるのとはわけが違います。
自分のチカラで間違えた事は自信の範疇です。
なので、明確な課題として成長の為のヒントに出来るのです。
面白いのは、我々の稽古で「四方」というとてもシンプルな型があるのですが、シンプルだからこそ稽古中に殆どの生徒は頭の中では「出来た」と思い込んでしまいます。
すると、課題として認識されずに体で覚えることを疎かにするから、動揺に負けて「出来ない」ことを覚えてしまうのです。
その「四方」の中でも鬼門となるのが「四方その3」
変化が入ります。
彼はこれがなかなか出来ませんでした。
ですが、いつものように練習して、ついに稽古でも間違えることなく出来るようになりました。
ただ「その3」の後に他の型をやると、彼はなかなか「四方その3」の動きから抜け出さずにいました。
更に、型以外の稽古でも、あまり皆が間違えることのない様な動きでさえも彼だけは「四方その3」の動きが体を支配しているようで、間違いを繰り返してしまいました。
そんな素直な彼は、胸張って間違えたらじっくりコトコト直せばよいのです。
最近はこんなことがありました。
中々出来ない中級者に対して「練習したか」尋ねると、残念ながら皆手を挙げませんでした。
以外にも、その彼も手も挙げていませんでした。
まあ、そこは小学3年生です、サボる時もあるだろう。
そう思っていました。
すると、稽古が終わった後に「練習はしたけど納得できなかったから手を挙げなかった」ということが判明しました。
どうですか、この成長ぶりは。
めちゃくちゃ格好良くないですか!
結局、生活していると課題が次から次へと押し寄せてくるわけです。
そんな課題に対して「何をしたらよいかわからない」と何もしないのは動揺を誘うだけです。
でも、真っ先に効率や損得を考えるのもどうかと思います。
まだまだ「手抜き」に繋がるリスクが高いですからね。
草むしりや夏休みの宿題と同じで、一つ一つやっていくしかないのです。
やっぱり、意識があるから成長(変化)に気が付くことが出来ると思います。
成長って瞬間的に激変するもんじゃありませんよね。
皆、少しずつの変化はしているはずです。
ですが、小さいから気付きにくいし、その時は気付いても印象に残らないから忘れてしまうのです。
全ての物事には結果が付いてきますが、その結果を素直に受け入れる事って大事です。
結果を受け止め、課題を把握して向き合うことが出来たなら、その時点で自信は付くはずです。
変化はほんの少しでも、たった1つで十分です。
その、小さな変化の結果が積み重なる、その先に「変身」という大きな成長があるのだと思います。
小さな変化に気付くには、やはり一つ一つの課題と向き合う癖をつけたいところです。
逃げてちゃダメなんです。
では。
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